2024年夏、プライバシー・AIガバナンス・セキュリティ分野の調査の一環として、欧州各地の主要機関を訪問しました。
法制度の解釈だけでは得られない“現場の空気感”や政策形成プロセスへの理解を深めることを目的に、複数機関の外観見学や予約制の内部見学を実施しています。
印象:建物内部には入れなかったものの、現地の重厚な雰囲気から国際的安全保障の中核組織としての使命感と存在感を実感しました。セキュリティや脅威への取り組みの最前線を担う存在として、今後も注視すべき組織です。
場所:Parlamentariumおよび関連施設
内容:歴史的背景に関する展示を通じ、EUの立法プロセスと透明性に触れました。
政策決定がどのように構築されていくか、展示・歴史資料を通して俯瞰できる設計になっており、欧州統合の理念と現実の政策形成との結びつきを理解できました。
AI Actに関する不明点に関して直接問い合わせるなど、貴重な体験も得られました。
場所:EDPB・EDPSの入居ビル(外観のみ)
印象:建物内部には入れなかったものの、GDPRの運用や監督を担う中枢組織が同居していること自体に、EUの一体的なデータ保護体制の強さを感じました。後ほどわかるのですが各施設の位置関係も含めて実際に行ってみると感じるものがありました。
文字情報で見るだけでは実感できない、「この建物で何が行われているか」の想像力をかき立てられます。
場所:Berlaymont(ベルレモンビル)
印象:AI ActやGDPRの草案が起草される本部の建物外観を見学。このビル自体が象徴的存在であり、EU全体の政策形成をリードする「司令塔」の雰囲気がひしひしと伝わってきました。
場所:Europaビルディング
印象:隣接するEuropean Commissionの向かいに位置し、AI Actの最終決定など重要な政策形成が行われる会議体であることを実感。
内容:予約制で内部見学を実施。会議室配置や各国代表の座席ルール、EU加盟国の旗が並ぶホールの見学を行いワーキングパーティを含む意思決定の多層構造に関する説明を受けました。
所感:会場の整然さ・プロトコルの緻密さにより、議論の重みと制度の実効性を象徴する空間と感じられました。ビルの構造にEUの思想が入っている点や、外観だけでは伝わらない制度を支える“設計思想”を実際の現場での説明を通じて得ることができました。
場所:ルクセンブルクのCJEU(外観)
印象:有名な方的判断が行われる場であることは事前に知っていましたが、実際に訪問するとやはり書物で読むだけでは得られない法的判断の最前線が繰り広げられる場の重厚さを強く感じました。
また、横にある公園に様々なEUの考え方が書かれており日本との文化の違いを感じました。
所管:きちんと調べて計画的に行くべきでしたが、ホテルの関係から月曜日に訪問したため内部に入ることはできませんでした。個人訪問者は、火・水・木曜の開廷日に本会議傍聴が可能なようです。(グループは別の扱いもあるようでした。)
今回の訪問を通じて強く感じたのは、制度や政策を理解するには、文献や制度解説だけでは決して掴みきれない“現場の肌感”や“価値観の根底”があるということです。
建物の構造や展示の配置、プロトコル、そこで働く人々の振る舞い――それらすべてが、制度そのものを支える文化や思想を雄弁に物語っていました。
特に、以下のような気づきがありました:
EUにおいては、制度は条文や規則だけでなく、“運用”と“象徴性”を一体のものとして設計されている
展示や空間、建物の構成に至るまで、透明性と説明責任を可視化する工夫が徹底されており、それが制度への信頼形成にもつながっていると感じました。
日本とはまったく異なる歴史的背景と制度設計のアプローチがある
たとえばEUでは、人権や自由といった理念的価値が制度の根幹に据えられており、制度は理念を具体化する手段として機能している印象です。
一方、日本では制度が“実務的課題の解決手段”として構築されているケースが多く、両者の違いは構造よりも「発想の源」にあると感じました。
現地で目にしたのは、多国籍・多文化的な人々が日常的に交錯する都市の姿と、制度によってそれを支える試み
ただし、個人的にはそのバランスや緊張感も肌で感じる部分があり、制度が社会の多様性をどう調和させるのかという視点は、今後も継続して注目したいところです。
実際に1ヶ月ほどの滞在を通じて、制度や政策を見る視野が「構造や条文」だけでなく、その背後にある社会や文化との接続点にまで広がったことが、今回最大の収穫でした。
今回の訪問内容は、以下のような形で実務支援に活かせます:
GDPR・AI Actの体制整備支援
国際法動向を踏まえたリスクアセスメント設計
講演・研修(大学/企業)での実務支援
ご希望の方はこちらよりご連絡ください。